客「シフォンさんがデュエルだってさ。」
客「なんのデッキ使うんだ?やっぱりメイドさんだからドラゴンメイドかな?」
客「向こうのいかにもオタク然としたのは?」
客「さっき四人まとめて店内でお仕置き受けてたね。」
客「流石にそれは笑うわ。」
まあ、あれだけ派手にお仕置きされれば目立つよね…。一部頭の痛い情報が流れてるけど。
ロック「先行はもらったでござるよ!
いくでござる、いくでござる、いくでござる!手札から強欲で謙虚な壺を発動!」
「ずいぶん懐かしいカードを使いますのね。確か効果はデッキトップから三枚めくって一枚を手札に加えるのと、使ったターンは特殊召喚できなくなる、でしたわね。」
ロック「裏を返せば特殊召喚の少ないデッキならなんの心配もする必要はないでござるよ。さあ、1枚目!サイバー・ダーク・カノン!2枚目!サイバー・ダーク・キール!3枚目!迷い風でござる!拙者は迷い風を手札に加える!」
「迷い風ってたしか、特殊召喚されたモンスターの効果無効化と攻撃力の半減、特定条件下で再利用が可能なカードだっけ?」
「その通りよ。墓地にある場合は相手がエクストラデッキからモンスターを出すと自身を再セットする効果もついてるの。」
葉月「見てる感じ基本、メタビートのスタイルかなー。そんなに展開するタイプのデッキじゃないよね。」
ロック「それは今後の楽しみという奴で候。手札から、サイバー・ダーク・カノンを捨てて効果!サイバー・ダーク・キールを手札に!続けてサイバー・ダーク・クローを捨てて効果!サイバーダーク・インフェルノを手札に加えるでござる!」
葉月「えっと…サイバーダークって、なに?おねーちゃん。」
あー、そっか…葉月ちゃん、サイバーダークは流石に知らないか…。
ロック「簡単に言うと墓地のドラゴン族を装備して戦うテーマですぞ。このデッキは特段決まった動きがない故エンジェルリンクのような明確な止めどころを持たないのが特徴でござるよ!手札にくわえたフィールド魔法、サイバーダーク・インフェルノを発動!そして、サイバー・ダーク・キールを通常召喚!効果で墓地のカノンを装備。カードを二枚伏せてターンエンドでござるよ!」
「カノンを装備したキールの攻撃力は1600とカノンの攻撃力の半分、800上がって2400。レベルの低いモンスターでこの攻撃力を確保できるのはサイバーダークならではね。」
ロック「それだけではないでござる、インフェルノがある場合、サイバーダークモンスターは効果対象にできず、効果で破壊されないのでござるよ。」
「……。」
「そうすると結構硬い盤面かも。」
うーん、シフォン大丈夫かなぁ?
(先攻1ターン目)
「私のターン、ドローですわ。」
淡々とドローするシフォン。
「手札から魔弾の射手ドクトルを通常召喚しますわ。」
ロック「そうはいかないでござる、罠カード発動!神の警告でござるよ!」
「!」
召喚を無効にされ破壊されるドクトル。
ロック「魔弾でござるか…可愛らしいメイドさんの癖して随分とバイオレンスなテーマを使うでござるな?しかし、魔弾はフィールドに撃ち手となる魔弾の射手がいないと発動できないでござる。召喚そのものを打ち消すカードならばフィールドには存在しない扱い故魔弾を撃つことすら叶わないでござろう。」
当然、カウンター罠なので同じカウンター罠以外チェーンもできないが、と続けるロックさん。
「…このままターンエンドですわ。」
葉月「ガラ空き、このままじゃやられちゃうよ?」
シフォンの盤面はまだ手札が5枚あるとはいえ、伏せカードすらない。
これでは次に展開されたらまず持たないだろう。
(後攻1ターン目盤面)
ロック「拙者のターンでござる!ドロー!……。
バトルフェイズでござる!」
「明らかに引きが悪かったパターンね」
「間違いないね。」
ロック「う、うるさいでござる!キールでダイレクトアタックござるよ!装備されているカノンの効果でデッキから超電磁タートルを落とすでござる!」
「そのまま受けますわ。」
ロック「これで猫耳メイドが一歩近付いたでござるよ!」
葉月「なんだろ、特別慌ててもないね。シフォンおねーちゃん。」
「ワンキルを狙うデッキでないと判断したからですわ。各種罠とそこそこの火力を確保しながら攻撃するデッキである以上、準備にも時間が掛かりますもの。」
ロック「過度に防御を固めず、デッキを見抜く力は見事。しかし、このままでは打開も出来ないでござろう?」
「さあ、どうかしらね?次の動きがまだあるのでしょう?」
ロック「随分余裕でござるな。サイバーダーク・インフェルノの効果!キールを手札に戻して、またキールを通常召喚するでござる!キールの効果で今度はクローを装備ですぞ!」
「装備カードを切り替えた…?」
「カノンはデッキからの墓地肥やしだけと、クローはエクストラデッキからモンスターを落とせるのよ。まあ、落とすカードなんて十中八九は旧神ヌトスでしょうね。」
「ヌトスの墓地に送られた際のタイミングを逃さない効果でダメージ計算時に破壊、これってタートルと合わせて二重の戦闘耐性もちってこと…?」
「その認識で合ってるよ。そしてインフェルノがある限り対象に取ることも効果破壊もできない。」
「……。」
確実な時間稼ぎ。けれど非常に効果的だ。
盤面を強固にしながら最後に突破不可能なモンスターで押しつぶす。
シフォンの魔弾もカウンターテーマに近いところはあるけど、向こうは対象に取ることも叶わず、破壊にも耐性をつけて来ている現状では厳しい展開かもしれない。
ロック「さあ、これで拙者はターンエンドですぞ。」
ジリジリと詰められていくシフォンの猫耳メイド包囲網。これで店の客層が葉月ちゃんとの時とは別ベクトルで変わるのはちょっと嫌だなぁ…。
(先攻2ターン目盤面)
「はぁ…、私のターン、ドローですの。」
大きなため息をついてターンを始めるシフォン。
「要は、順々に処理すればいいだけですわ。魔弾の射手ワイルドを通常召喚。そして、ワイルドとは別のラインで魔弾-デスペラードをサイバーダーク・インフェルノを対象に発動しますの。インフェルノを破壊しますわ。」
ロック「せ、拙者のインフェルノがー!…なーんちって、インフェルノの破壊された時の効果!デッキから未来融合ーフューチャーフュージョンを手札に加えるでござる!」
「未来融合ですって!?」
「また随分懐かしいカードですわ。」
未来融合は発動後、次の自分のスタンバイフェイズに融合素材をデッキから落とし、さらにその次の自分のスタンバイフェイズで融合召喚を行うカード。かつては禁止制限に入ったり、戻った時にはエラッタされたりと様々なことがあったけどね…。
「バトルフェイズですわ!ワイルドでキールを攻撃ですの!」
ロック「攻撃力の低いワイルドでキールを攻撃しようなどと何を考えているかは分からぬが、させぬでござる!墓地の超電磁タートルを除外して効果!バトルフェイズを終了でござるよ!」
「構いませんわ、私はこれでターンエンドですの。」
葉月「シフォンおねーちゃん、多分コンバットトリック系のカードを握ってるね。」
「まあ、そこまでは考えつくよね。効果無効と弱体を持つクロス・ドミネーターかもう1つってところかしら。」
「そうなの?」
葉月「シフォンおねーちゃんの手札はまだ4枚あるしどっちか握ってても十分可能性は高いよね。」
盤面には魔弾の射手・ワイルドの一体のみ、今回は手札から魔弾を打てるけど、それでも少し心許ない気もする。
(後攻2ターン目盤面)
第三話:ネタと雑コラのロック君③へ続く